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学童・少年野球人口の減少に関してのレポート【都道府県別減少率あり】

学童・少年野球の人口減少に関してのレポートになります。2021年6月に引き続き地域の違いなども載せたレポートも加筆して2021年度版としました。

各地域での人口減少のレポートしても活用できると思います。

目次

子どもの野球人口は減り続けている?

近年、野球界で何かと問題に挙がる競技人口の減少。10年前や20年前では全く考えられなかった事だが、2015年頃から次第に指摘されるようになった。

なかでもプロ野球界から子どもの野球人口の減少を危惧する指摘がでたことは、とてもインパクトがあった。

さて、それでは、子どもの野球人口はいつから減少していて、どの程度減少しているのか、はたまたその減少にはどのような特徴があるのだろうか。

野球人口が減少していると言われても、それを深く調べたことがある人はほとんどいないだろう。今回は小学生軟式野球に絞って見てみることにした。

小学生軟式野球人口の減少が起きたのは2010年以降?

小学生の野球人口といっても、連盟やチームに所属してない人口を明らかにすることはできない。今回は全日本軟式野球連盟の学童チームに所属する小学生の数を野球人口とした。

小学生野球人口の変化

最初に目を引くのが1975年から1979年にかけて大きく増加し、1980年から1982年にかけて大きく減少したことではないだろうか。

この減少は、全日本軟式野球連盟(以下:全軟連)へのチーム登録に登録料が発生したことが主な原因であり、実際に野球人口が大幅に減ったわけではない。

次に、2017年から2018年にかけて約16%減少している。

これは、2017年まではチーム数×20人の推定値を選手登録者数としていたものを、2018年から選手登録者数の実数を調査するようになったからである

これまでの野球人口の動態をみると、1980年以降、約10年ごとに軽微な増加と減少を繰り返している。

1980年代には、1981年と1982年に大きな減少があったものの、それ以降は1991年まで毎年少しずつ増加している。

次に1990年代は、1991年に前年比1%の減少があり、それ以降0.1%~3.3%の減少が続いた。

特に1994年から1997年にかけて約10%も減少している。

2000年代には、大きな変化はなく、横ばいが続いた。

2010年代になると、小学生軟式野球人口の減少は大きくなり、2011年から2014年にかけて約15%も減少している。

2010年に29万6,480人だった人口は、2020年には18万7,015人になり、10年間で10万人減少した

この減少はこれまでに類を見ないものであり、危機的な問題だと言えるのではないか。

人口減少と比較すると違う視点が

日本は少子高齢化社会にあり、子どもの数は減少し続けている。

子どもの野球人口が減少しているといっても、子どもの減少と比較し、相対的な変化を見たらどうなのだろうか?

今回は、文部省及び文部科学省による学校基本調査の小学校生徒数を小学生の人口と定義し、全生徒数に占める野球人口の割合を野球人口率と表し、1990年から2020年までの30年間の動態を分析した。

図2 小学生野球人口率

小学生軟式野球人口だけを見ると、1990年代は減少していたが、全生徒数に占める割合をみると、1990年から2010年まで増加し続けている。

1990年に野球人口率は3.65%であったが、1999年には4.0%を超え、2010年には4.24%になった。

そして2010年代にはいると、2012年までは4.1%を維持し、横ばいにあったが、2013年には4%を割り、明確に減少が始まった。

そして野球人口の算出方法が変わった2018年には前年から約0.5%と大きく減少している。

このことから、以前から20人未満で活動するチームが多く、数字に表れない減少が起きていたことが想定できる

野球人口の減少についてまとめると?


小学生軟式野球人口の変化をみると、1990年代に一度減少し、2000年代にそれが回復、2010年代から再び減少し今に至る。

しかし、少子化の影響を考えた相対的な変化では、2010年まで増加傾向にあった。その後2012年までは横ばい傾向にあり、2013年から減少が始まった。

また、2018年に小学生軟式野球人口の算出方法を変更したところ、大幅な減少が見られた。

これは、1チームあたりに所属する野球人口が減少していることが指摘できるのではないか。

このことから、2010年以降の野球人口の減少には、

①1チームあたりの人数が減少➠②満足に試合ができないチームが増加➠

③満足に野球ができなくて辞める人口が増加➠④チーム数が減少➠

⑤競技実施現場の縮小、➠⑥更なる競技人口の減少

という流れが考えられる。

このことから、小学生の軟式野球人口の減少を食い止めるためには、野球を満足にできる環境やチームの活動を活発にする対策が必要となるのではないだろうか。

日本の学童・小学生野球人口のいま

近年、子どもの野球離れが進む中、チームに所属して試合をする子どもの数は年々減り続けている。

前回のコラム「学童・少年野球人口の減少に関してのレポート」では、2010年以降、小学生の野球人口が減少していることを指摘した。


ただ、日本各地を回ってみると、野球離れが深刻なところ、現状維持できているところ、逆に増え始めたところと地域によってその差は大きかった。

それでは、小学生野球人口はどのような地域で多く減少していて、どのような地域ではあまり減少していないのだろうか?


今回は、近年の減少について分析していくため、2006年から2020年までの学童・小学生野球人口の推移を見ていく。なお、学童・小学生野球人口は、全日本軟式野球連盟の選手登録者数とした。

学童・小学生野球人口の減少をみると、2006年から2010年までは、あまり減少していなかった。

2017年に大きく減少しているが、これは全日本軟式野球連盟の選手登録者数が、1チームあたり20人の推計値から、選手の実数に変わったためである。

なので、実際どの程度学童・小学生野球人口が減少したのかはわからないが、2010年から2020年まで毎年平均3%ずつほど減少している。

学童・小学生野球人口はどこで大きく減少しているのか

学童・小学生野球人口を都道府県ごとに集計して、20010年から2020年にかけての減少を見てみると、東京都が一番減少していて(12418人減)、次に愛知県(6570人減)、岐阜県(5444人減)と続いた

東日本の地方や人口の多い東京都や埼玉県で学童・小学生野球人口の減少数が大きかったそれでは、学童・小学生野球人口の減少した割合(減少率)はどうだったのか。

2010年から2020年の間で最も減少率が大きかったのは京都府で60%以上減少していた(7460人→3402人)

京都府以外は、一部首都圏が含まれるものの、東北地方や四国地方、中部地方の都道府県がランクインしている。ちなみに、最も人口が減少していた東京都の減少率は41.39%で、22番目に減少が大きかった。

一方で、減少が小さかった都道府県はどこなのだろうか。

47都道府県の中で減少数が最も少なかったのは長崎県(430人減)で、次いで愛媛県(556人減)、宮崎県(801人減)であった。

大阪府を除いて減少数が小さかったのは地方のもともと学童・小学生野球人口が少ない地域がほとんどだった。

次に、減少率を見てみると、最も減少率が小さかったのは神奈川県(-11.32%)で、次いで大阪府(-12.09%)、千葉県(-18.38%)であった。

減少率が小さいトップ3は都市部の都道府県であった。

このことから、人口の多い都道府県では減少率が小さいことが推測できる。しかし、東京都は人口が多いにもかかわらず減少率も都市部の中では減少率が大きかった

今後は、都市部の中でも減少率の大きかった東京都や京都府減少率の小さかった神奈川県や大阪府、千葉県や埼玉県を比較することで、学童・小学生野球人口の減少の原因がわかるかもしれない。

学童・小学生野球人口率の変化は?

次に、学童・小学生野球人口の減少に対する少子化の影響を取り除いたらどんなことが言えるのか。

小学生の児童数に占める学童・小学生野球人口割合を学童・小学生野球人口率としてその変化を見た。

学童・小学生野球人口率が減少していれば、野球をする小学生の数は減少している可能性が高く、逆に増加していれば、野球をする小学生は増えていると言える。

学童・小学生野球人口率の減少が大きかったのは和歌山県で、4.01%減(11.88%→7.87%)だった。

2010年には、小学生の約10人に1人が学童チームに入っていた計算になる。

それが2020年には約8人に1人に減少したという。

学童・野球人口率が大きく減少したほかの都道府県をみると、鳥取県や岐阜県、青森県など地方の都道府県が続いた。

しかし、栃木県や京都府でも野球をする小学生が減っていることには注目しておきたい。

一方で、学童・小学生野球人口率の減少が小さかった都道府県をみると、なんと大阪府は2010年から2020年の間に野球をする小学生の割合は0.04%(1.64%→1.68%)増加していた。

ほんの少しの増加だったが、他の都道府県が減少していること、スポーツが多様化していることなどを考えると、増加していることは学童・小学生野球人口が増加していると言ってもいいのかも知れない。

その他の学童・小学生野球人口が増加している都道府県をみると、神奈川県、長崎県、福島県、静岡県がランクインしている。

この中でも福島県は、学童・小学生野球人口は大きく減少しており、東日本大震災の大きな影響で野球をするグラウンドや施設、チームやメンバーが少なくなるといった原因が考えられるが、野球をする小学生の割合はあまり減少していないため、子どもたちの間でまだ野球は人気のあるスポーツなのかもしれない。

地方では野球人口が大きく減少!? 都市部の中でも減少しているところも

2010年から2020年までの学童・小学生野球人口の変化をみると、日本全国各地で減少(一部大阪は学童・小学生野球人口率が微増していたが)していた。

特に地方での減少は大きく、子どもの減少や指導者不足が問題ではないかと考える。

ただ、地方でも長崎県や福島県、静岡県、滋賀県など、あまり減少していないところもあった。

一方で、京都府や東京都でも学童・小学生野球人口の減少は大きかった

都市部なりの問題があるのかもしれないが、大阪府や神奈川県、千葉県では減少が比較的小さいため、特別な原因があるように思える

都道府県によって学童・小学生野球人口の減少に差があることが分かったが、現場に出てみるとその差はもっと感じるのかもしれない。

皆さんの住む地域では、学童・小学生野球人口の減少はどうなっているのでしょうか?

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〇筆者紹介
南方隆太(みなみがた りゅうた)
筑波大学大学院博士後期課程に在学しており、スポーツ政策学の視点からスポーツ人口の増加(スポーツ人口政策)について研究している。現在は、自身が社会人硬式クラブでプレーする野球の競技人口減少に危機感を抱き、野球競技人口政策の策定に向けた研究をしている。

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